父の様子には全るで、「そんなにおれのことが気になるならお前の口で話をまとめてみるがいいじゃないか。どうだ」
しかも裁判長の態度には、その教養あるものに対するのとは全るでちがつた同情があるのですから、その点でも当然もう少しの理解はあつてもいゝものだと私は考へたのです。
もう、家に火をつけて全る焼けにするとおどかされたって、議員などになる意志は毛頭なかった。彼は憤慨に堪えなかった。そんな時、蒲団を引っかぶって寝て我慢するたちだった。
そして逸子は、初めて、今までとは全るで違つた暗らい哀しみを覚ぼえるやうになつた。
他の人達の顛倒とは全るで反対に、何にもなかつたやうな平静と、その事件によつて起つた二つの自殺——しかも、一は彼の冷酷に近い答へがその致命傷となつた事が明白に知れて居り