)” の例文
父の様子にはるで、「そんなにおれのことが気になるならお前の口で話をまとめてみるがいいじゃないか。どうだ」
(新字新仮名) / 矢田津世子(著)
しかも裁判長の態度には、その教養あるものに対するのとはるでちがつた同情があるのですから、その点でも当然もう少しの理解はあつてもいゝものだと私は考へたのです。
ある女の裁判 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
もう、家に火をつけてる焼けにするとおどかされたって、議員などになる意志は毛頭なかった。彼は憤慨に堪えなかった。そんな時、蒲団を引っかぶって寝て我慢するたちだった。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そして逸子は、初めて、今までとはるで違つた暗らい哀しみを覚ぼえるやうになつた。
惑ひ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
他の人達の顛倒とはるで反対に、何にもなかつたやうな平静と、その事件によつて起つた二つの自殺——しかも、一は彼の冷酷に近い答へがその致命傷となつた事が明白に知れて居り
サニンの態度 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)