入湯にゅうとう)” の例文
「ええ。あなたのは洗うんでなくって、本当に湯に這入はいるんだからことにそうだろう。実用のための入湯にゅうとうでなくって、快感をむさぼるための入浴なんだから」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
入湯にゅうとうに来ていようとは、左門老人にとっては、じつに、ねがってもないしあわせといわねばなりません。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また泣入なきいって倒れてしまう様に愁傷しゅうしょう致すのも養生に害があると申しますが、入湯にゅうとう致しましても鳩尾みぞおちまで這入って肩はぬらしてならぬ、物を喰ってから入湯してはならぬ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わが住む部屋も、欄干にればやはり同じ高さの二階なのには興が催おされる。湯壺ゆつぼの下にあるのだから、入湯にゅうとうと云う点から云えば、余は三層楼上に起臥きがする訳になる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)