つぐない)” の例文
「三千代さんの心機を一転して、君を元よりも倍以上に愛させる様にして、その上僕を蛇蝎だかつの様ににくませさえすれば幾分かつぐないにはなる」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まあ! 執念深い! 発車するまでに、青木さんが、お見えになったら、そのつぐないとして、皆さんを箱根へ御招待しますわ。御覧なさい、もう切符を
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それで君の夫人に対する、最後のつぐないとして、夫人はこの大悲惨事に対しては、直接にも間接にも、全然責任はないものであると云うことを、全世界に明瞭にしたまえ
そのまま等閑なおざりにすべき義理ではないのに、主人にも、女にも、あのうすものつぐないをする用意なしには、忍んでも逢ってはならないと思うのに、あせってもがいても、半月や一月でその金子かねは出来なかった。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ画がいかにも淋しい。でき得るならば、子規にこの拙な所をもう少し雄大に発揮させて、淋しさのつぐないとしたかった。
子規の画 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
向後こうご父の怒に触れて、万一金銭上の関係が絶えるとすれば、彼はいやでも金剛石ダイヤモンドを放り出して、馬鈴薯ポテトーかじり付かなければならない。そうしてそのつぐないには自然の愛が残るだけである。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)