偏僻へんぺき)” の例文
その方便なりと信ずるは、その学術の正しからず、心事の正大ならざるのみならず、またその水戸学の偏僻へんぺきを脱するあたわざるに由るなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そうかと思うとどこかまたイギリスのノーザンバーランドへんの偏僻へんぺき片田舎かたいなかの森や沼の間に生まれた夢物語であるような気もするのである。
いかなればわらはは初め君を知る明なくして、空想に耽り實世じつせうとき、偏僻へんぺきなる人とは看做みなしたりけん。おん身は機微を知り給へり。機微を知るものは必ず能く勝を制す。
然しながら、天下の形勢は、島津をして、薩南偏僻へんぺきの、田舎者のみにしておかなくなったぞ。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
その根柢に一系の哲學もなうして、一時の感の浮べるまゝに、或は好惡に驅られて衆他を排し、或は狹き經驗を尺度として大なる人間を是非するが如き頑陋ぐわんろう偏僻へんぺきなる小理想をいへるなりと。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼は無謀の攘夷家にあらず、彼はその作用余り多きに苦しみたりき。しかれども三歳児の偏僻へんぺきは、三十歳の壮年の偏僻なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
偏僻へんぺきの治法をしりぞけた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
けだしかの偏僻へんぺきの論、邪妄の主義のごとく世を禍するものはあらず。人あにみずから好んで悪をなさんや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)