侠気をとこぎ)” の例文
旧字:侠氣
万事は侠気をとこぎのある扇屋の亭主の計らひで、検屍が済む、役人達が帰つて行く、一先づ死体は宿屋の方へ運ばれることに成つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、勝気で男優りで、侠気をとこぎがあつて弟思ひの親切な鍵屋の伯母とは、互に意気の相投ずるものがあつた。そして伯父は何事によらず彼女に一目を置いて居た。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
思切おもひきつて坂道さかみちつてかゝつた、侠気をとこぎがあつたのではござらぬ、血気けつきはやつたではもとよりない、いままをしたやうではずつとさとつたやうぢやが、いやなか/\の憶病者おくびやうもの
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何んなことをもわかりよく正義に解釈しやうとするやうな侠気をとこぎなところも持つてゐた。
尾崎紅葉とその作品 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
肥大な老紳士は、かねてうはさに聞いた信州の政客せいかく、この冬打つて出ようとして居る代議士の候補者の一人、雄弁と侠気をとこぎとで人に知られた弁護士であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)