伊右衛門いえもん)” の例文
今日あることはみんな予期していたし、誰にもいまさらといなぐさめの言葉などはなかった。ひるすこしまわってから本家にあたる佐野伊右衛門いえもんが来た。
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
居谷岩子女史おいわさん伊右衛門いえもんどのをうらむ比などにあらず、可愛さあまって憎さが十の十幾倍という次第であった。
▲『四谷』の芝居といえば、十三年前に亡父おやじが歌舞伎座でした時の、伊右衛門いえもん八百蔵やおぞうさんでしたが、お岩様のばちだと言って、足に腫物しゅもつが出来た事がありました。
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
それは伊右衛門いえもんと云う摂州せっしゅうの浪人であった。伊右衛門は又市の口に乗せられて、それでは先ずやしきも見、母親になる人にもってみようと云って、又市にいてお岩の家へ来た。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それゆえ、もしその当時に、お岩や伊右衛門いえもんはまだしものこと、せめて宅悦たくえつの顔にでも接していたならば、作者が童心にうけた傷は、さらにより以上深かったろうと思われる。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それは伊右衛門いえもんも信じていた。で幸いこの事については何の事件も起こらなかった。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兎などは子供でも猟れるほどいる……亡き父親の伊右衛門いえもんが猟好きで、鉄砲も良いものを持っていたし、また体を鍛える意味で幼少の頃から伊兵衛を伴れて歩いたものである。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
伊右衛門いえもんさん、久しぶりで」
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)