仲間ちゆうげん)” の例文
伊織が續いて出ると、脇差を拔いた下島の仲間ちゆうげんが立ち塞がつた。「退け」と叫んだ伊織の横に拂つた刀に仲間は腕を切られて後へ引いた。
ぢいさんばあさん (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
絶えざる低い大太鼓おほだいこの音に例のごとく板をバタバタたゝく音がきこえて、左手の辻番つじばん小屋のかげから仲間ちゆうげんござかゝへた女とが大きな声で争ひながら出て来る。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彦山村からつきへ抜ける薬師峠の山路に沿うて、古ぼけた一軒茶屋が立つてゐます。その店さきに腰を下ろして休んでゐるのは、松井佐渡守の仲間ちゆうげん喜平でした。
小壺狩 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「千代さんは仲間ちゆうげんみたいやなア。村一番の良い衆(金持ちの事)とは見えん。」と、定吉は、油のコテ/\した千代松の丁髷ちよんまげが、午後の日影に光るのを見てゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
むろん、町人に借りる前に、家臣達の知行米を借りたから、小身の武士は、仲間ちゆうげんも置けないし、種々の内職さへもした。旗本の間では、町人から持参金のある養子を貰つたりした。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)