付木つけぎ)” の例文
私はお徳の前に立って、肴屋さかなやの持って来た付木つけぎにいそがしく目を通した。それには河岸かしから買って来たさかなの名が並べしるしてある。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
闇をたどって忍びやかに鈴鹿明神の頓宮とんぐうに入りこんだ竜之助は、とりあえず荷物をほうり出して、革袋の中から火打道具と蝋燭ろうそくと懐中付木つけぎとを探って、火をつけゆかに立てて
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
硫黄いおうか懐中付木つけぎをふところにして乗ると船に酔わないというが、ひどく船酔いした時には、半夏はんげ陳皮ちんぴ茯苓ふくりょうの三味を合せて呑ませるさ、だが、そんな物のない場合が多いから、しかる時には
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
油で濁った半台はんだいの水の中に、さまざまの魚類の死骸しがいや切りそいだその肉片、くしざしにした日干しの貝類を並べて、一つ一つに値段を書いた付木つけぎ剥板そぎいたをばその間にさしてあるが、いずれを見ても
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
七兵衛は、小笊の中へ付木つけぎを入れてかえすと、娘は、それを持って帰って行きました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それからここに付木つけぎがあります、これへ消炭けしずみで書いたのが無類の記念です。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)