人心ひとごころ)” の例文
電信柱に下向きのかたがり燕、一羽気まぐれに浮いたかもめが、どこかの手飼いのうぐいす交りに、音を捕うる人心ひとごころを、はッと同音に笑いでもする気勢けはい
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やっと人心ひとごころついた千代子は、幾度いくたびとなく繰返した感嘆詞を、もう一度繰返さないではいられませんでした。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
天照大御神あまてらすおおみかみの御国にあらざるがゆえに、定まれるきみなくして、狭蝿さばえなす神ところを得て、あらぶるによりて、人心ひとごころあしく、ならはしみだりがはしくして、国をし取りつれば
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
人心ひとごころも無き六美女をいたわり慰めつ、笠を傾け、人馬を急がして行く程もなく筑前領に入り、深江ふかえといふに一泊し、翌暁まだまぬ雪をんで東する事又五里、此の姪の浜に来りて足をとゞめぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
憂ひは深きわが胸の叫びに答へん人心ひとごころ
思う時の人心ひとごころ
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)