すくな)” の例文
すくなくとも親兄弟や親戚友人なぞの意見に盲従した結婚の別れ話がめったに人事相談所に来ない。自由結婚から来た自由離婚だけが来る。
私はこのお話で多少でも本当の事と迷信との間に境界線が引けたとしたならば、すくなくも私が朝夕弾いているこの一台のピアノだけは、非常にそれを喜んでくれるであろう。
音楽界の迷信 (新字新仮名) / 兼常清佐(著)
すくなくとも「寺」という事が明かでなけりゃ何故「草の戸ごしの麦畑」といったかがわからぬ。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
しかし、能の各種の表現には、以上の如き説明も及ばない全然無意味、不合理、もしくは不調和と見えるものが決してすくなくない。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すなわちどこか喰い足りないために見物が見たがらないし、役者の方も張り合いがないというわけで、次第に演ずる度合いがすくなくなって行く。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこで私は大胆にも承知をしまして、その青年の質問に答えたのですが、その質問が又、意外に組織立っているのにすくなからず驚かされた事でした。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いろいろな随筆、わけてもごく平凡な明るい意味で、「医を仁術」と心得ている医師たちの記録には、彼等の職業を極度に攻撃したものがすくなくなかった。
すくなくとも鼻の表現の研究上、かのスフィンクスと相対して、最も奇抜な、そして興味津々たるコントラストを見せている事を否定する訳に参りませぬ。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すくなくとも今までのように当てズッポーの病名を付けて、浅薄な外科や内科の療法を応用したり、そいつが巧く当らなかった時には縛り上げたり、監禁したりなぞ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すくなくともこの言葉が第一義式性愛から出たものでない事は、こうした種類の黒焼の元祖、大星由良之助氏も承知の前であったであろう事を疑い得ないのであります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「何が余計な事だ。すくなくとも姫草が虚構吐きだった事がハッキリわかったじゃないか……」
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
文化程度が高くなればなる程産児制限が公行するものとすれば、最高の文化は民族の自滅を意味する事になる。その事実は決してすくなくない。元来、日光と土とは最大の享楽である。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
鏡にうつる御自分の鼻を御覧になると、御満足御不満足は別問題と致しまして、鼻の恰好その物に就いて一種のぼんやりとした疑問をいだかれた方がすくなくないであろうと考えられます。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今調査中じゃが、小切手を書いたこのの主人のもの、受取った犯人のもの、銀行員のものとすくなくとも三通りは附いている筈だよ。銀行に来た犯人は手袋を穿めていなかったんだからね。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すくなくとも半分以上はこの「ドン」欲しさの試掘願いだと云っても過言じゃない。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかしすくなくとも「あれが当選したら」位の挨拶はするだろうと予期していたのに、まるで懸賞募集に応じたものかどうかすら知らない程度の無表情さで、あとは留守中の報告に移りました。
所感 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それに又、僕は小さい時から方々を引越していたせいか、友達がすくないのです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すくなくとも私は、小さい時からよく寝呆ねぼける癖があったので、今でも妹によく笑われる位だから、私の何代か前の先祖の誰かにソンナ病癖びょうへきがあって、それが私の神経組織の中に遺伝していないとは
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すくなくとも父の肩から上と私の背中だけは水面上に出ていたと思う。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すくなくとも私などには到底出来ない芸当である。
創作人物の名前について (新字新仮名) / 夢野久作(著)