些少いささか)” の例文
つらつら観ずれば、人の命なるもの、たつとしと思えば、尊ときに相違なけれど、とうとからずと見る時は、何のまた些少いささかの尊さのあるべき。
一夜のうれい (新字新仮名) / 田山花袋(著)
父親に死なれて郷里に歸ると間もなく、目の見えぬ母とお吉と新太郎を連れて、些少いささかの家屋敷を賣拂ひ、東京に出たのであつた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
各種の楽器(これで或る時は虫の音を聞かせ、又或る時には鳥の音をきかせ、その他川の音風の音、蛙の音などを聞かせたものである。)そうして些少いささかの催眠剤など。
五右衛門と新左 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほかのと違って、そう言った事情わけで、犬にも猫にも汚させるのが可厭いやでしたから、俥ではるばると菩提寺へ持って来て、住職にわけを言って、あらたに塔婆を一本古卒塔婆ふるそとばの方は些少いささかですが心づけをして
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世話する人あつてお定らの村に行つてゐたので、父親に死なれて郷里くにに帰ると間もなく、目の見えぬ母とお吉と新太郎を連れて、些少いささかの家屋敷を売払ひ、東京に出たのであつた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「成程」と呟いたが右近丸は些少いささか驚いた様子であった。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はい、些少いささか、伊賀流の忍術しのびを……」
五右衛門と新左 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)