五重塔ごじゅうのとう)” の例文
遠藤清子の墓石おはかの建ったお寺は、谷中やなか五重塔ごじゅうのとうを右に見て、左へ曲った通りだと、もう、法要のある時刻にも近いので、急いで家を出た。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ここは近江おうみの国、比叡山ひえいざんのふもと、坂本さかもとで、日吉ひよしの森からそびえ立った五重塔ごじゅうのとうのてッぺん——そこにみんなのひとみがあつまっているのだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麻布あざぶ古川ふるかわ芝山内しばさんないの裏手近くその名も赤羽川あかばねがわと名付けられるようになると、山内の樹木と五重塔ごじゅうのとうそびゆる麓を巡って舟楫しゅうしゅうの便を与うるのみか、紅葉こうようの頃は四条派しじょうはの絵にあるような景色を見せる。
太陽のまぶしさにさえぎられて、しかとは見えないが、つるのごとき老人が、五重塔ごじゅうのとうのてッぺんにたしかにいるようだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ではさきごろ、日吉ひよし五重塔ごじゅうのとうへ登っていたのも居士ではなかったか、はじをもうせば、里人さとびとの望みにまかせてたところが、一さぎとなって逃げうせた」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)