五十路いそじ)” の例文
一個の大器が、百戦百難の風雪をしのいで、年もようやく五十路いそじに入り、いよいよその風貌にも年輪としわの威を加えてきたものとみな頼もしく見ていたのである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この尼法師、年はもはや五十路いそじを越えているが、その容貌はつやつやしい。机に向って写すは経文かと見ると、そうではなく、平家物語の校合きょうごうをしているのであります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
欄干てすりにあらわれたるは五十路いそじに近き満丸顔の、打見にも元気よき老人なり。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
都路は五十路いそじあまりの三つの宿、……
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「聞けば、劉玄徳とやらは、年も五十路いそじというではないか。なんでまだ世の憂き風も知らぬあのむすめを、他国のそんな所へ、しかも後添えになどやれましょうぞ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五十路いそじを越えて、まだこんなに水々しいところが何よりの証拠で、都にあって祇園精舎ぎおんしょうじゃの鐘の声を聞くよりは、ここに閑居して沙羅双樹さらそうじゅの花の色の衰えざるを見ていたい。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
身はいまだ無病、年も五十路いそじの前、今にして、その任におこたえしなければ、やがて老いては、如何に思うとも、これを微忠にあらわすことはできなくなりましょう。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五十路いそじに近いおやじが
「なんの、お父上とて、まだ五十路いそじ、御養生次第では」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)