五個いつつ)” の例文
凄い寂しい車塚の郷の、三軒の廃屋の真ん中の家の、黄昏たそがれのように暗い部屋の中に、人形ひとがたを完全に備えている、五個いつつ木乃伊ミイラが並んでいた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
侍女三人、燈籠二個ふたつずつ二人、一つを一人、五個いつつを提げて附添い出で、一人々々、廻廊のひさしけ、そのまま引返す。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何とやらいふ菜に茄子が十許り、脹切はちきれさうによく出来た玉菜キヤベーヂ五個いつつ六個むつ、それだけではあるけれ共、野良育ちのお定には此上なくなつかしい野菜の香が、仄かに胸を爽かにする。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
怖々こわ/″\四辺あたりを見ると、瓜番小屋に人もいない様だから、まアい塩梅と腹がってたまらぬから真桑瓜を食しましたが、庖丁がないから皮ごとかじり、空腹だから続けて五個いつつばかり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なお見ゆ、少しく高し。その数五個いつつになる時、累々たる波の舞台をあらわす。美女。毛巻島田けまきしまだに結う。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)