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云號
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いひなづけ
云號と思ひ居る事の
嬉敷は思へども利兵衞殿の
心底變りなければお菊に
逢まじと云をお竹は
無理に吉三郎を
連來り今度は
新道へ廻り
庭口の切戸を
把お菊の部屋へ
誘引たり然るに此お菊は
幼年より吉三郎と
云號と聞居たりしが
今年十七歳に
成始めて吉三郎を
父は番頭となし娘のお竹はお菊と
相應の
年恰好なれば
腰元にして
召仕ひけるが此者子供の時より吉三郎とも
心安くお菊と
云號のことも知り居けるにぞ吉三郎が
臺所より來りけるを