乾反ひぞ)” の例文
どこかすすっぽい、乾反ひぞったような顔を見ていると、霊媒といっても、これ以上、霊媒らしいのはちょっとあるまいと思って、笑いたくなった。
雲の小径 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
火鉢に炭をがうとしたら、炭がもう二つしかなかつた。炭取の底には炭のこなの中に、何かの葉が乾反ひぞつてゐる。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
元来下宿屋に建てたうちだから、建前は粗末なもので、ややもすると障子が乾反ひぞって開閉あけたてに困難するような安普請やすぶしんではあったが、かたの如く床の間もあって
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かしはやナラの葉の、赤い色が褪せて、乾反ひぞになつてしまつてから、やうやく色づくのだと云はれるイタヤもみぢも、その一と角に既に眞ツ赤に紅葉してゐる。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
みかへりの塔涸川の底乾反ひぞ
今日:02 今日 (新字旧仮名) / 西東三鬼(著)
窓のない柿葺こけらぶきの小屋で、二坪ほどの板敷に古茣蓙ふるござを敷いてある。入口の扉は乾反ひぞって片下かたさがりになり、どうやってみても、うまくしまらなかった。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鼻も顎もしゃくれ、唇まで受け口になり、全体に乾反ひぞってしまったような感じの個性の強い顔で、誰だって、いちど見たら忘れない。お忘れでしょうは、ご挨拶だった。
雲の小径 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
乾反ひぞったように突っぱってしまった。
春の山 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)