乳母ばあ)” の例文
やがてお客様達がお食堂の方へお入りになると、乳母ばあやさんは達也様を抱いて、静かなお離室はなれへやって来て、一息いていました。
美人鷹匠 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
みゑ「乳母ばあや、アノお前に逢うのが間が悪いと云って這入り兼て、表に立って居るのだが、何うか私に免じて逢ってやっておくれでないか」
そして何かと言えば「うじより育ち」と言う。何のことだかわかりゃしない。大方乳母ばあやを悪く言うつもりなんだろうが、乳母やは誰よりも正直だ。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「まあ、そうでしたね、もうお説教の刻限でしたのに、忘れていました、参りましょう。坊ちゃまがむつからなければ、乳母ばあやもいらっしゃいな」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「自分から、来てくれといって使いをよこしておきながら、人をばかにして——。帰っちまうよ私は。いいかい乳母ばあや」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぷんと匂う香料の香や「乳母ばあや」と呼んで振り返ったその態度とりなし優艶やさしさには言葉に尽くせない品がある。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『とうとう敵の団長を召捕ったよ。当代の金太郎さんだ。乳母ばあや、お菓子をやっておくれ』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「汐汲み」を踊って、楽屋で乳母ばあやのおっぱいを飲んだことを朧気おぼろげに覚えています。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
乳母ばあや、私一人じゃ怖い」
乳母ばあや!」
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そしてその乳母ばあやが、切支丹屋敷の、あの吉野桜の咲く南縁で、よく、甲斐絹かいきを織る機織唄はたおりうたをうたって聞かせてくれたことも、お蝶はいまだに忘れません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあさあ、乳母ばあやがおっぱいを上げますから、乳母やのお子さんになりなさい、お松様はお乳を上げることができませんから、本当のお母さんにはなれません」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小「いや/\、まア乳母ばあや、いうも気の毒な事だが、丈助はお前とは相違して悪人である」
『ヤッ乳母ばあや、聞えるだろう?』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
乳母ばあや、ごらんなさい、登様が笑いましたよ。まあなんという可愛いお児さんでしょう」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乳母ばあや、あまり人の前で、郁次郎郁次郎と、わしの本名を言ってくれるな」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今時分何ういう理由わけで入らしったてえと、犬に吠えられたり何かして、命からがらようようの事でお前のとこへ来た理由は、誠に乳母ばあや面目ないが、長らくうちに勤めて居た手代の粂之助というものと
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「甲府へゆけば、小さい時、私に乳を飲ませてくれた乳母ばあやが居る」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乳母ばあや、とにかく家へはいって」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう、乳母ばあやか」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)