乙亥きのとい)” の例文
隆盛たかもりはとにかく、事がらによっては十八年の十が脱落したという可能性もある。しかし明治八乙亥きのといとあればまず八年に間違いはないのである。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
永正三丙寅と承安元辛卯、いずれも弥勒元年とするもその十年は乙亥きのとい庚子かのえねで辰の歳じゃない。
って印行の次第を記し以て序に代ふ。昭和十年乙亥きのとい秋八月於偏奇館、荷風散人しるす
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
乙亥きのとい正月二日、午前三時五十分。首都大東京の中心。丸の内有楽町に行なわれたこの壮烈な市街戦の事実を御存じの方はすくなかろう。読者諸君の中にもこれを知っておらるる方はあるまい。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
去年が「甲戌きのえいぬ」すなわち「いぬの年」であったからことしは「乙亥きのとい」で「の年」になる勘定である。こういう昔ふうな年の数え方は今ではてんで相手にしない人が多い。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)