中橋なかばし)” の例文
路地には往々わう/\江戸時代から伝承し来つた古い名称がある。即ち中橋なかばし狩野新道かのうじんみちと云ふが如き歴史的由緒あるものもすくなくない。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
やがてこの座敷へ通されて来た三十前後の町人風の男は、京橋の中橋なかばし広小路に同商売の菓子屋を営んでいる松沢という店の主人庄五郎であった。
恨みの蠑螺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
柏軒が家を中橋なかばしに構へたのも、恐くは此頃の事であらう。文書の上に於ては、わたくしは弘化四年の榛軒の湘陽紀行中に始て中橋の家の事を見出した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
悦二郎にも、中橋なかばしの家のひとたちにも……。だから、そのひとたちのことをあたしにおたずねになっても無駄よ。まるっきり、なにも知らないのですから。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「大急ぎで中橋なかばしの鳴子屋へ行ってくれ。気の毒だが検屍けんしが済まないうちは、葬いを出さしちゃならねえ」
誰も知った通り、この三丁目、中橋なかばしなどは、とおりの中でもあい宿しゅくで、電車の出入ではいりが余り混雑せぬ。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とにかく当座の宿をとってからの思案と、お米はその晩、中橋なかばしすじの茗荷屋みょうがやという家を選んだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
音「それ/\中橋なかばししげさんが来ていると云うじゃアないか」
路地には往々江戸時代から伝承しきたった古い名称がある。即ち中橋なかばし狩野新道かのうじんみちというが如き歴史的由緒ゆいしょあるものもすくなくない。