世故せいこ)” の例文
人情世故せいこにあくまで通じていた忠利は病苦の中にも、つくづく自分の死と十八人の侍の死とについて考えた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ひるがえって思うに、太祖の遺詔に、果して諸王の入臨をとどむるの語ありしや否や。あるいは疑う、太祖の人情に通じ、世故せいこに熟せる、まさにかくの如きの詔をのこさゞるべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
牧は特にかんと称すべき女でもなかったらしいが、とにかく三つの年上であって、世故せいこにさえ通じていたから、くみがただにこれを制することが難かったばかりでなく
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
子澄名はてい分宜ぶんぎの人、洪武十八年の試に第一を以て及第したりしより累進してこゝに至れるにて、経史に通暁せるはこれ有りといえども、世故せいこに練達することはいまだ足らず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)