不躾ぶしつ)” の例文
不躾ぶしつけに襖をあけることは出来なかった。とはいえ、女の声で、自分の名を呼び、天国様をと云ったからには、——空耳でないとして——声の主を確かめたかった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なかは信州味噌をした味噌汁である。不躾ぶしつけながら箸のさきで椀のなかを掻きまわしてみた。さつま芋の賽の目に切ったものが、菜味としてふんだんに入っている。
たぬき汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
今日、丸の内の他にボカ/\と出来る箱に穴を明けた様な、あの不躾ぶしつけな物質的な建築は何という不快な形と色であろう。恐らくアメリカにでもあんな醜い町はないであろう。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
「かような場所でお呼びとめ申しまして、まことに不躾ぶしつけではございますが」
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
不躾ぶしつけ乍ら——といった調子で、左京は娘の方へ盃を差しました。
不躾ぶしつけ。」
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
甚だ不躾ぶしつけの話だが、早く夕飯のときがくればいいと待っていたのである。またも、卓上は山海の珍味だ。捕鯨船というのは、おそろしくご馳走を食わせるところだ。
海豚と河豚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
と、頼母は、少し周章あわてた。しかし厳粛の声で、「不躾ぶしつけの依頼をするのではない」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
不躾ぶしつけではあるけれど手紙に書いてさし上げる気になった。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
不躾ぶしつけ千万、何んということだ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)