不知哉丸いさやまる)” の例文
藤夜叉の産んだ、あのひよわい一病児の不知哉丸いさやまるが、こんにち、都に君臨を見せようなどとは、かつては、夢想もしていない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく、不知哉丸いさやまると藤夜叉の母子は、あの日を、都見物のさいごとして、近く三河の一色いっしきへ帰るつもりでいたのであろう。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不知哉丸いさやまるは答えもせず、さっきからもう、つまらなくて堪らない顔つきなのだ。そばのひとの袂を引っぱッて俄にせがんだ。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鎌倉における自分の立場も、またいま、不知哉丸いさやまるを高氏の長子として表面に出すことのむずかしさなども、充分、得心とくしんしていたはずの彼女である。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「近江へもどれとの御意ぎょいはそれか。伊吹には越前の前(藤夜叉)と御一子不知哉丸いさやまるとが残してある。お気がかりよの」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昼、伊吹城へ着くとすぐ、桃井直常に付きそわれて、不知哉丸いさやまるともべつに、ここの客殿におかれていた彼女であった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そこには、おいとしい不知哉丸いさやまるさまも、とうにお帰りあって、日夜、母者ははじゃのお名を呼んでおられますものを……」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊吹ノ城から遠からぬ近江国犬上郡の不知哉川いさやがわ田楽村でんがくむらで生れたので、名も“不知哉丸いさやまる”と、かりにけられた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「恨むなら恨め。わしはおまえを憎いとは思わぬだろう。また生涯忘れもしまい。不知哉丸いさやまるをも生んだ女だ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……ただ藤夜叉には、不知哉丸いさやまるがあるために、半ば、わしへも心をひかれつつ、道誉との仲は、打ち明けられずにいるのだろう。そうだ、それで解けたといえよう。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……だのに、あなたはあれ以来、いちども会うては下さらず。二人の仲の不知哉丸いさやまるも、無事に育っているのかどうか、それすら聞かしても下さらないではございませぬか
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは足利殿の末党まっとう一色村の者どもですが、きのう不知哉丸いさやまるさまの母御前ははごぜより、途中、ご危難のよしのらせをうけ、おあるじ刑部ぎょうぶ殿のいいつけにて、夜来、ご安否を案じて
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このあいだ連れていたのは、まだ一ぺんも父として会ってもいないが、不知哉丸いさやまるであったのだろう。おそろしいものだ肉親の血がさせる直感は。あのとき、すでにそんな気がした。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「早いのう。もう七年か……。藤夜叉ふじやしゃ不知哉丸いさやまるの上にも同じ月日が流れていよう」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一途いちずに、三河の一色村へと焦心あせってはいるものの、一色党の人々の疑惑を何と解いたらいいか、その口実の見つからないうちは、不知哉丸いさやまるとも、母として会えない心地がするのだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのかん。おそらくは不知哉丸いさやまると越前ノ前は、柏原の陣屋のほとりか、寺院の門の蔭にでもいて、よそながら尊氏の通過を見ていたかもしれなかった。しかし尊氏の眸にははいらなかった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女の女心では、草心尼や仲時にすがって、不知哉丸いさやまるに初の父子の対面をさせ、じぶんの生んだ子を、高氏の嫡子ちゃくしと、確認させようとするのであろうが、時節でないし、憎むべき女のずるさだ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、高氏の落し子の不知哉丸いさやまるも、成人しているであろうに。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご一子、不知哉丸いさやまるさまに」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不知哉丸いさやまる
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不知哉丸いさやまる
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)