不断著ふだんぎ)” の例文
或時紺飛白こんがすり筒袖つつそでの著物の縫いかけが、お嫂様のお部屋にあったのを見かけました。於菟おとさんの不断著ふだんぎを縫って見ようとなすったのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
陸が人と成ってからのちは、渋江の家では重ねものから不断著ふだんぎまでほとんど外へ出して裁縫させたことがない。五百は常に、「為立したては陸に限る、為立屋の為事しごとは悪い」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……………仲町を左へ曲って雪見橋へ出ると出あいがしらに、三十四、五の、丸髷まるまげに結うた、栗に目口鼻つけたような顔の、手頃の熊手を持った、不断著ふだんぎのままに下駄はいた、どこかのかみさんが来た。
熊手と提灯 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
不断著ふだんぎのままで外へ出たのを、しかられはすまいかという心配と、穿いているぽっくりという下駄げた、赤塗の畳付たたみつき綺麗きれいな鼻緒がたって、初めは他所よそゆきだったのが、古くなってすっかり減ってしまい
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)