下足げそく)” の例文
下足げそくにお客でないことを断って来意を通じてもらうと他の者が出て来た。また繰返していうと、こんどはかすりの羽織にはかまをつけた、中学位な書生さんが改めて取次ぎに出た。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
牛屋ぎゅうや下足げそくの呼声、書生節、乞食浪花節、アイスクリームの呼声、バナナ屋の怒号、風船玉の笛の、群集の下駄のカラコロ、酔っぱらいのくだ、子供の泣声、池のこいのはねる音
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
下駄げた雪駄せったに替えた。それに下足げそく預り所の設備があった。雨の降る日は下駄を上草履に替えた。少しも不便を感じなかった。しかし和服のものは極めて少なかった。現に極めて少ない。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
と、職人風の一人が、見るにえかねたといったかたちで、さっと勢い込んで両手を湯槽に入れた時、ドヤドヤと向井湯の主人や、下足げそくの小供、脱衣場だついばの番人のおつるなどが駆けつけて来た。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
出入ではいりにね。日本の芝居小屋しばいごや下足げそくがあるから、天気のいい時ですらたいへんな不便だ。それで小屋の中は、空気が通わなくって、煙草が煙って、頭痛がして、——よく、みんな、あれで我慢ができるものだ」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
全くその頃は綾之助が出ると、投げ下足げそくというほど、席亭よせの手が廻りかねる大入繁昌はんじょうだった。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
下足げそくを受け取って、出ると戸外は雨だ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)