下婢はした)” の例文
しるべの燈火ともしびかげゆれて、廊下らうかやみおそろしきをれし我家わがやなにともおもはず、侍女こしもと下婢はしたゆめ最中たゞなかおくさま書生しよせい部屋へやへとおはしぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「どうぞ、この御庵室の端になと置いてくださいませ。——お弟子としてお許しなければ、しばらくはお下婢はしたの者としても」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逃げまどってくる者は、みな召使の下婢はした側女そばめたちばかりで、子を抱いているはずの年景の妻は見あたらなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という老人や、ふかい意味はもたないが、ただ老公さまのおいいつけだから、善い事にちがいないと思っていたしております——と答えたお下婢はしたなどもいた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おりませぬ。お下婢はしたにうかがってみたら、こん夜のお客衆にあげる惣菜を、畑へ採りに行っているとかで」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、小石川の家臣たちは、お下婢はしたや小者のはしにいたるまで、忙しさをみな歓んでいるふうだった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水仕部屋の障子の内で、お下婢はしたのひとりが言った。けれど、野狐かむささびの悪戯わるさぐらいに思われたことなのだろう。また、にぶい明りとれ声を元のように、閉じこめている。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下婢はしたが駈けてきた。小侍もそれへ来た。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)