上高地かみこうち)” の例文
日本につぽんアルプスの上高地かみこうち梓川あづさがはには、もといはなで、あしすべるといはれたほど澤山たくさんゐたものですが、近頃ちかごろはだんだんつてたようです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
僕は「あっ」と思う拍子にあの上高地かみこうちの温泉宿のそばに「河童橋かっぱばし」という橋があるのを思い出しました。それから、——それから先のことは覚えていません。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
山好きの友人から上高地かみこうち行をすすめられる度に、自動車が通じるようになったら行くつもりだといってげていた。その言質げんちをいよいよ受け出さなければならない時節が到来した。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私はむしろ、この明るいオッチョコチョイの女給をつれて、矢田津世子が一緒に行こうと云った山々、上高地かみこうち奥白根おくしらねの温泉宿へ行ってみればよかったと思った。なぜであるかは分らない。
二十七歳 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
頃日けいじつまた鶴見のふもとの扇山のむこう側に、小上高地かみこうちともいうべき一大渓谷があるのを発見したとのことで、氏自身二、三日のうちにこれが探検に出かけて行くといっていた。氏は弱冠六十五歳である。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
日本アルプス横断中、一時行方ゆくえ不明になった第一高等学校の生徒三名は七日なのか(八月)上高地かみこうちの温泉へ着した。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三年まえの夏のことです。僕は人並みにリュック・サックを背負い、あの上高地かみこうちの温泉宿やどから穂高山ほたかやまへ登ろうとしました。穂高山へ登るのには御承知のとおり梓川あずさがわをさかのぼるほかはありません。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)