一抹いつまつ)” の例文
かのゲエテの希臘ギリシヤと雖も、トロイのたたかひの勇士の口には一抹いつまつミユンヘンの麦酒ビイルの泡のいまだ消えざるを如何いかにすべき。歎ずらくは想像にもまた国籍の存する事を。(二月六日)
が、その間のなんとなく一抹いつまつの危機をはらんでいるような沈黙は、戸外で荒れ狂う吹雪ふぶきうなりを明瞭はっきりと聴かせて、いっそう凄愴なものにしてしまった。法水はようやく口を開いた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)