一団ひとかたま)” の例文
旧字:一團
その右の方から、さっきの音がはっきり聞え、左の方からもう一団ひとかたまり、白いほこりがこっちの方へやって来る。ほこりの中から、チラチラ馬の足が光った。
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それが何人なにびとであって何のためにする声だかわかりません。こちらへ来る人の声であるか、またはどこかへ一団ひとかたまりになっている人々の声であるかもよくわかりませんでしたが
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
地震は盗賊のたくみだから、早く出口々々へ非常線というものを張って下さい、魚見岬の下あたりには一団ひとかたまり居るだろう、手強てごわい奴、と思うから、十分の手当をして、とちゃんとおしたためなすったの。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
車がまだ全く停止とまりきらないうちに、彼は歩廓に飛下りて、いち早く改札口に向かったが、彼の乗った車輛は最後車の次であった為に、改札口を出たときは、既に一団ひとかたまりの人々が構外へ吐出されていた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)