一品いっぽん)” の例文
或時宜秌門ぎしゅうもんの女院が中宮で一品いっぽんの宮を御懐妊の時に、法然は御戒の師に召され、公胤は御導師としてまいり合せたことがあった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いちど吉田一品いっぽんの腹をきかねば、死にきれぬ。側近第一のきょうが、なんで、みかど以下、われら同志のものを、蹴おとしたか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ后腹というわずかな違いがあっただけで朱雀すざく院のみかどの御待遇も、当帝の一品いっぽんの宮を尊重あそばすのに変わりはなかったにもかかわらず
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
(一)位あるものは位田いでんを給せられる。一品いっぽん(親王)八十町より四品四十町、しょう一位八十町より従五位八町まで。女はその三分の二。(二)官職にあるものは職分田しきぶんでんを給せられる。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
これまでからも祈祷きとうに関した用でつきあっていたのであるが、特に親しいという間柄にはなっていなかったところが、今度の一品いっぽんみやの御病気の際に
源氏物語:56 夢の浮橋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「本院(後伏見)、新院(花園)一品いっぽんノ宮、女院方まで、みなお揃いでお出ましとか」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一品いっぽんみやのお姿にも劣らず、白く清らかな皮膚の色で、以前より少しおせになったのがなおさらお美しく見せた。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
故院の御代みよの末ごろに御長皇女おんちょうこうじょ一品いっぽんの宮が琴を好んでお弾きになったので御下賜あそばされたのを、今日の賀宴のために太政大臣が拝借してきたのである。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
一品いっぽんみやの御病気は、あの弟子僧の自慢どおりに僧都の修法によって、目に見えるほどの奇瑞きずいがあって御恢復かいふくになったため、いよいよこの僧都に尊敬が集まった。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
兵部卿ひょうぶきょうの宮は寂しく悲しいままによくおいでになっては姉君の一品いっぽんの宮の御殿を慰め所にあそばした。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一品いっぽんみや様が物怪もののけでわずらっておいでになって、本山の座主ざすが修法をしておいでになりますが、やはり僧都が出て来ないでは効果の見えることはないということになって
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
下向きになってその絵を御覧になる一品いっぽんみやのおぐしが、なびいて外へもこぼれ出た片端に面影を想像して、この美しい人が兄弟でなかったならという心持ちに匂宮におうみやはなっておいでになった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
兵部卿の宮の恋が年とともに態度の加わる院の一品いっぽんの姫宮も、一つの院の中にいる薫には、ことに触れて御様子がわかりもするのであって、評判どおりに優秀な御素質の貴女らしいことを知っては
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)