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むねわりながや
かくの如き
溝泥臭い堀割と
腐った木の橋と肥料船や
芥船や
棟割長屋なぞから成立つ陰惨な光景中に寺院の屋根を望み
木魚と鐘とを聞く
情趣は
あっしンとこなんざ、
若旦那においでを
願うような、そんな
気の
利いた
住居じゃござんせん。
火口箱みてえな、ちっぽけな
棟割長屋なんで。……
汲せんとなし其
節に此
眞向ひの
棟割長家建續けたる其中にも一
層汚く
荒果し
最小狹なる家の中に五十四五なる老人
一個障子一枚
押開き
端近ふ出物の本を
繰廣げ見てゐたりしが今長三郎が手を