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ぬけは
その
草染の左の袖に、はらはらと
五片三片紅を点じたのは、
山鳥の
抜羽か、
非ず、
蝶か、
非ず、
蜘蛛か、
非ず、桜の花の
零れたのである。
梁にある鶏の巣へ丸木の枝を「なわ」でまとめた
楷子が壁際に吊ってあってその細かく出た枝々には
抜羽だの糞だのが白く、黄いろくかたまりついて
そこに、
白鳥の
抜羽一
枚、
白帆の
船ありとせよ。
蝸牛の
角を
出して、
櫓を
操るものありとせよ、
青螽の
流るゝ
如き
発動汽艇の
泳ぐとせよ。