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たびなれ
つれ
逃來りし譯ゆゑ
敢て
憎む程のこともなし夫に
旅馴ぬゆゑ熊谷土手にて
惡漢に
欺され既に妻をも
奪はれんとする所に八五郎の
咄しにより某
駈着て惡漢を
如何なる
譯なるやと
問に八五郎
然ば
御咄し申べし先刻越後者の
由若き夫婦連の
侍士私し見世に御休み
成れしが
逃亡者とも見えず
身形も可なり立派なれども一向に
旅馴ぬ樣子にてイヤモウ
意氣地もなく殊に女は足を
兎も角も先
道連に成申さんとて是より彼の男と
同道して行程に彼旅人は
旅馴たる者と見えて此邊の名所々々知らざる處もなく
此處に見ゆるが
比良の高嶺彼處が三井寺
堅田石山などと案内者の如く
教ふるにぞ友次郎夫婦は
我知らず面白き事に思ひ猶樣々に此處は
何彼處は