“ごぶじん”の漢字の書き方と例文
語句割合
五分心100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
やがてえんの片隅で燐寸マッチの音と共に、咳はやんだ。明るいものはへやのなかに動いて来る。小野さんは洋袴ズボンの膝を折って、五分心ごぶじんを新らしい台の上にせる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分が先刻せんこく晩餐を済ましてから、少許すこし調査物しらべものがあるからと云つて話好の伯母さんを避け、此十畳の奥座敷に立籠つて、余りあかからぬ五分心ごぶじんの洋燈の前に此筆を取上げたのは、実は
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「はあ、そうでしたか」と云ったぎり、小野さんはじ上げた五分心ごぶじんの頭を無心にながめている。浅井の帰京と五分心の関係を見極みきわめんと思索するごとくに眸子ぼうしは一点に集った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「時に小夜の事だがね」と先生は洋灯ランプを見ながら云う。五分心ごぶじん蒲鉾形かまぼこなりとも火屋ほやのなかは、つぼみつる油を、物言わず吸い上げて、穏かなほのおの舌が、暮れたばかりの春を、動かず守る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)