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おもひまど
注げば又
呷りて、その余せるを男に差せば、受けて納めて、手を
把りて、顔見合せて、
抱緊めて、惜めばいよいよ尽せぬ
名残を、いかにせばやと
思惑へる互の心は
紋羽二重の
小豆鹿子の
手絡したる
円髷に、
鼈甲脚の
金七宝の玉の
後簪を
斜に、
高蒔絵の
政子櫛を
翳して、
粧は
実に
塵をも
怯れぬべき人の
謂ひ知らず
思惑へるを、
可痛しの
嵐に
堪へぬ花の
顔や
柱に身を倚せて、
斜に内を窺ひつつ貫一は
眉を
顰めて
思惑へり。