銘々めい/\)” の例文
遠くの呼鈴ベルが鳴つた。間もなく三人の婦人がこの室に這入つて來た。銘々めい/\卓子テエブルについて座をめ、ミラア先生は四番目の空席くうせきに腰を下した。
「若い女が多勢居て、銘々めい/\自分だけ良い子にならうと辯じ立てるから、手の付けやうがねえ。親分の前だが、女は苦手だね」
その遺子宗虎丸が親の敵を討つといふ筋。大切おほぎりは『花競はなくらべ才子さいし』五人男に三人多いのが、銘々めい/\自作のツラネで文学上の気焔をかうといふ趣向。
硯友社と文士劇 (新字旧仮名) / 江見水蔭(著)
根岸派、千駄木派、早稲田派、硯友社派、民友社派など、皆違つた思想と文章とを持つて、銘々めい/\志す方に向いて居た。
尾崎紅葉とその作品 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
そろひの浴衣ゆかたはでものこと、銘々めい/\申合まをしあわせて生意氣なまいきのありたけ、かばきももつぶれぬべし、横町組よこてうぐみみづからゆるしたる亂暴らんぼう子供大將こどもたいしやうかしらちやうとてとしも十六
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
寢食しんしよくことまをすにおよばず、器物きぶつ取扱とりあつかひことみづこと掃除さうぢこと其外そのほかさい仕事しごとくわんしてみん銘々めい/\獨立心どくりつしんつておこなへば自然しぜん責任せきにんおもんずるやうになる。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
銘々めい/\自分じぶんいてるんだ』とグリフォンがこたへて、『審問しんもんむまでにわすれてしまふとこまるから』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
持出もちいだせば雲助どもは是は有難う御座りますと手ん/″\に五六ぱいヅツひつかける所へ藤八ソレさかな銘々めい/\に金二分づつやるに雲助はイエ親方是は入やせんと辭退じたいなすを馬鹿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼等かれらはそれをいとんでるけれども、はたつてはなした最後さいごいとはしなはのやうにつたつなである。ばあさんまるつくつて銘々めい/\まへへ二せんづつのぜにいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
下役の銘々めい/\多勢おおぜいぞろ/\と渡邊織江の世話になった者が、祖五郎お竹を送り立派な侍も愛別離苦あいべつりくで別れをおしんで、互に袖を絞り、縁切榎えんきりえのきの手前から別れて岩吉は帰りました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
平八郎はしばらくそれを見てゐたが、重立おもだつた人々を呼び集めて、「もう働きもこれまでぢや、好く今まで踏みこたへてゐてくれた、銘々めい/\此場を退いて、しかるべく処決せられい」
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
其他そのた裁判官さいばんくわんも有る、会社員も有る、鉄道の駅長も有る、なかには行方不明ゆくへふめいなのも有る、物故ぶつこしたのも有る、で、銘々めい/\げふちがふからしておのづから疎遠そゑんる、長い月日には四はうさんじてしまつて
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何分お城のやうな大きな家で、寢部屋なども下女二人は別ですが、あとは銘々めい/\のを存分に、一部屋づつ取つてあります。
銘々めい/\に、代り代り人生の舞台に出て行く形が面白いではないか。古来何千年の昔から人間がやつて来たと同じやうに、波の上に波が打寄せて来るやうに……。
墓の上に墓 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
繼「本当についえでは有りませんか、是からも未だ長い旅をするのに、銘々めい/\蒲団の代を払うのは馬鹿々々しゅうございますよ、却って一人寝るより二人の方があったかいかも知れません」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
叩立たゝきたてしかば一村二百軒の百姓そりやこそ名主殿へ盜賊が這入はひつたぞ駈付かけつけ打殺うちころせと銘々めい/\得物々々えもの/\たづさへて其處へ來りヤア盜人は面をすみにてぬりたるぞあらひて見よと聲々こゑ/″\のゝしり盜人の面を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
銘々めい/\勝手かつてわかつた々々と自分じぶん議論ぎろん都合つがふはうにのみくばつて、がう學術的研究がくじゆつてきけんきうおこなはれず、一ぱうあとから彌生式やよひしき混入こんにふしたとひ、一ぱうは、いなしからずとひ。水掛論みづかけろんをはつてしまつた。
それをまもつくのは至極しごく結構けつかうでありますが、如何いかにせん無味乾燥むみかんさうなる一ぺん規則きそくでは銘々めい/\好都合かうつがふわからず、他人たにんから命令めいれいされたことのやうにおもはれて、往々わう/\規則きそく忽諸こつしよにするのふうがある。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
二人は銘々めい/\に支度をして、そつと旅籠屋を拔出したのは、それから間もなく、闇の小田原街道を、手に手を取るやうな心持で、凾嶺はこねの三枚橋を渡りました。
と奉公人銘々めい/\に包んで遣わしまして、其のほか着古しの小袖半纒はんてんなどを取分け。
探置さぐりおき同月廿七日又候似役人と相成名主方へ罷越案内致され彼大盡かのだいじん夫婦を召捕家内は申すに及ばず土藏へ封印ふういん附置つけおき有金千百八十兩盜取ぬすみとり申候此時盜取し金を資本もとでに致し銘々めい/\家業に有付以後は盜賊たうぞく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
俵屋は妙に陰氣で、家族は銘々めい/\の部屋に閉ぢ籠つてしまひ、平次と八五郎は無人の境を行くやうな心持で、母屋おもやの廊下を突き拔け、眞つ直ぐに物置の中に入りました。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
銘々めい/\葛籠つゞらを縁側へ出す。
「小屋の道具でないことは確かで——第一、そんなによく切れるのは危なくて、舞臺へ持出せやしません。尤も、銘々めい/\どんなドスを隱して持つてゐるか、それまでは解りませんが——」
銘々めい/\の城下に御藥園を作らせ、一と通りの藥草を栽培さいばいさせたばかりでなく、兵粮丸ひやうらうぐわんなどを研究させ、萬一の場合に備へましたが、江戸はさすがに將軍家の膝元で、音羽、大塚、白山などに
元は強い者いぢめをする惡侍やならず者をこらすつもりで、十二人の仲間が、銘々めい/\干支えとちなんだ、身體に十二支を一つづつ文身したんだが、だん/\仲間に惡い奴が出來て、強請ゆすり、かたり、夜盜
銘々めい/\見張つて居たわけぢやございません。私は店に居りましたし、下女はお勝手に、御新造とお孃樣はそれ/″\のお部屋に、新助は店の隣りに、辨次は夜遊びに出て居たやうで、翌る日の朝になつて、フラリと歸つて參りましたが」