胡瓜きうり)” の例文
しかし糸瓜へちまのように巨大な胡瓜きうり、雪達磨だるまのような化物の西瓜すいか南瓜かぼちゃ、さては今にも破裂しそうな風船玉を思わせる茄子なす——そういった
火星の魔術師 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
泉の水は溢れていさゝ小川をなし、胡瓜きうりなどつくれる野の畑へと流れ行く。吾馬熱き蹄を小川に踏み入れて、鼻鳴らしつゝ水飲む。
といつて、徳富蘇峰氏や、胡瓜きうりやのやうにステツキをつくことがあまり好きでなかつたので、代はりに蝙蝠傘を用ゐることにした。
今度こんどふたつのさけごゑがして、また硝子ガラスのミリ/\とれるおとがしました。『胡瓜きうり苗床なへどこいくつあるんだらう!』とあいちやんはおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かれは一ぱん百姓ひやくしやうがすることはなくてはらないので、ことには副食物ふくしよくぶつとして必要ひつえうなので茄子なす南瓜たうなす胡瓜きうりやさういふもの一通ひととほりはつくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
茄子なす胡瓜きうりに水をやつてゐる男が、彼女の姿を見て叮嚀にお辞儀をした。ダリヤが一杯咲いてゐた。藪蔭には南瓜かぼちやつるをはびこらせてゐた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
胡瓜きうりなどは全くなくなつて、おびただしかつたまくわ瓜、唐もろこし、林檎りんごなども——高くなつたのであらう——甚だ少い。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
たひ味噌汁みそしる人參にんじん、じやが、青豆あをまめとりわんたひ差味さしみ胡瓜きうり烏賊いかのもの。とり蒸燒むしやき松蕈まつたけたひ土瓶蒸どびんむしかうのもの。青菜あをな鹽漬しほづけ菓子くわしいちご
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
半時間毎はんじかんごとくらゐかれ書物しよもつからはなさずに、ウオツカを一ぱいいでは呑乾のみほし、さうして矢張やはりずに胡瓜きうり手探てさぐりぐ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その翌日、町の子の克巳は、茄子なす胡瓜きうり西瓜すゐくわを、どつさりおみやげにもらつて、町の家に帰つていつたのでした。
(新字旧仮名) / 新美南吉(著)
あとから、いつもの蓋物の、切昆布の佃煮を小さいものに分けたのと、胡瓜きうりのお漬物とを持つて来てお盆から移した。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
現にいつか垣の外に「茄子なすびなへ胡瓜きうりの苗、……ヂギタリスの苗や高山植物の苗」と言ふ苗売りの声を聞いた時にはしみじみ時好じかうの移つたことを感じた。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
茄子なすび大根だいこの御用をもつとめける、薄元手を折かへすなれば、折からの安うてかさのある物よりほかさほなき舟に乗合の胡瓜きうりつと松茸まつたけの初物などは持たで
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分は默然もくねんとしてわがへやに歸つた。さうして胡瓜きうりの音でひとらして死んだ男と、革砥かはどの音を羨ましがらせてくなつた人との相違を心の中で思ひ比べた。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうすると、本州だけしか書かないうちに、——なんだ、それや胡瓜きうりかつて……(笑ひながら泣き出す)
驟雨(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
季候のせいで発育の旺盛である胡瓜きうりとか朝顔とかは、五六日で発芽し半月で花と実を持つさうである。日本では尺に満たない金星草ひとつばが幅二尺高さ一丈に達して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
耕一君の風呂敷包からは、新聞紙にくるんだ緑色の胡瓜きうりと、赤いトマトとが、たくさん出て来ました。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
むね茅葺かやぶき屋根と一つの小さい白壁造の土蔵とがあつて、其後にはけやきの十年ほどつたまばらな林、その周囲には、蕎麦そばや、胡瓜きうり唐瓜たうなすや、玉蜀黍たうもろこしなどを植ゑた畠、なほ近づくと
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
じんき(白い綿を胡瓜きうりの小ひさなのぐらゐにしたもの)は長く母の左手で絲になつて伸びると、右の手で𢌞してゐた車が、チヨンと把手とつてを鳴らす音とともに、つみに卷き着く絲の玉は
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
お桐は之を聞いて喜んで居た。もう隣村から真瓜まくはや西瓜を売りに来る季節になつた。前の畑には胡瓜きうり茄子なすが作つてあつたし、西瓜や真瓜を食つて其皮を畑に捨てるので、烏は始終来て離れなかつた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
手には三四本ほど、熟し切らない胡瓜きうりを持つて居た。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
此の外に、蜀黍たうもろこし胡瓜きうり
ほのじろき胡瓜きうりの花よ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
胡瓜きうりのお舟は
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
商船会社の志望者といつても、もとは大抵胡瓜きうり馬鈴薯じやがいもと同じやうにをかの上で生れたので、それ/″\自分の故郷といふのをつてゐる。
垣根かきね胡瓜きうり季節きせつみなみいて、あさもやがしつとりとかわいたにはつちしめしておりるとなにひがんでかかげさがうり
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
茄子なすび大根だいこ御用ごようをもつとめける、薄元手うすもとでをりかへすなれば、をりからやすうてかさのあるものよりほかさほなきふね乘合のりあひ胡瓜きうりつと松茸まつたけ初物はつものなどはたで
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夕顏ゆふがほには、豆府とうふかな——茄子なすびなへや、胡瓜きうりなへ藤豆ふぢまめ、いんげん、さゝげのなへ——あしたのおつけのは……
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「えゝれですか。あれは胡瓜きうりつたんです。患者さんが足がほてつて仕方がない、胡瓜きうりつゆで冷してくれと仰しやるもんですからわたしが始終つて上げました」
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
書物しよもつそばにはいつもウオツカのびんいて、鹽漬しほづけ胡瓜きうりや、林檎りんごが、デスクの羅紗らしやきれうへいてある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なんにもつかまらなかつたがちひさなさけごゑ地響ぢひゞき硝子ガラスこわれるおととをきました、其物音そのものおとあいちやんは、うさぎ屹度きつと胡瓜きうり苗床なへどこなかへでもんだにちがひないとおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「ええ、大丈夫よ。それよりあんた、胡瓜きうりでも人蔘にんじんでも洗つてよ。これから忙しいのよ。」
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
恒子 胡瓜きうりよ、姉さま。
驟雨(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
すると其処そこに立つてゐた亜米利加婦人で、胡瓜きうりのやうに細長く、おまけに胡瓜のやうに亭主にぶら下つてゐたのが、甲高い声で
かれ村外むらはづれの櫟林くぬぎばやしそばたので自分じぶんいへちかくにはさういふものつくはたけが一まいもなかつた。それでも胡瓜きうりだけは垣根かきね内側うちがはへ一れつゑてうしろはやしまじつたみじかたけつててた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
丸い洋食皿には、コロッケと、きれいに切つたトマトと胡瓜きうりが入れてあります。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
この朝顏あさがほ夕顏ゆふがほつゞいて、藤豆ふぢまめ隱元いんげん、なす、さゝげ、たうもろこしのなへ、また胡瓜きうり糸瓜へちま——令孃方れいぢやうがた愛相あいさうに(お)のをつけて——お南瓜たうなすなへ、……と、砂村すなむらせいぞろひにおよんだ、一騎當千いつきたうせん
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「成る程さうだ、嬢ももう妙齢としごろになつたかな。」どうやら今日まで娘は胡瓜きうりと同じやうに、日に日に大きくなるものだといふ事を忘れてゐたらしい口風くちぶりだつた。
画には胡瓜きうりのやうな山や仙人やがいてあつたが、何処が良いのかさつぱり判らなかつた。
たひが高かつたら鰯で、鰯が高かつたら胡瓜きうりで済ます事が出来るし、そしておまけに男といふものはその胡瓜をすら鯛と思つて食べるものだと信じてゐるので、一つの井戸の代りに
そして膝小僧を抱へ込んで達磨だるまの事や胡瓜きうりの事を考へてゐたが、いつ迄待つてみてもお客が入つて来ないのに不審を起して、不承無精ふしようぶしやうに出掛けてみると、お客は二人とももう寺には居なかつた。
胡瓜きうりのやうな長いおとがひに、胡瓜のやうなとげをちら/\させてゐる。
すると、聴手は持前の胡瓜きうりのやうな長いあごをしやくつて