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烏帽子
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えぼし
ふりがな文庫
“
烏帽子
(
えぼし
)” の例文
それがまた末はほのぼのと霞をかけた二条の
大路
(
おおじ
)
のはてのはてまで、ありとあらゆる
烏帽子
(
えぼし
)
の波をざわめかせて居るのでございます。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その中に一際目立つ
烏帽子
(
えぼし
)
型の大岩があって、その大岩の頂に、丁度
二見
(
ふたみ
)
ヶ
浦
(
うら
)
の
夫婦
(
めおと
)
岩の様に、石で刻んだ小さな鳥居が建ててある。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
霧は相変らず辺りをかすめて巻上り、目近かに見える
烏帽子
(
えぼし
)
型の岩峰や、尾根尾根に並び立つ尖峰を薄くぼかして、奇異な景観を造る。
一ノ倉沢正面の登攀
(新字新仮名)
/
小川登喜男
(著)
ろうそくの
火
(
ひ
)
は、
赤
(
あか
)
い、
小
(
ちい
)
さな
烏帽子
(
えぼし
)
のように、いくつもいくつも
点
(
とも
)
っていたけれど、
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれて、べつに
揺
(
ゆ
)
らぎもしませんでした。
大きなかに
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
結局は甲冑の如く床の間に飾られ、弓術の如く食後の腹ごなしに
翫
(
もてあそ
)
ばれ、
烏帽子
(
えぼし
)
直垂
(
ひたたれ
)
の如く
虫干
(
むしぼし
)
に昔しを
偲
(
しの
)
ぶ種子となる外はない。
四十年前:――新文学の曙光――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
町へ出る時にも、やっぱり米友は
烏帽子
(
えぼし
)
を
冠
(
かぶ
)
って
白丁
(
はくちょう
)
を着ておりました。それから例の杖に油壺をくくりつけて肩に
担
(
かつ
)
いでおりました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
小松宮から拝領した
素袍
(
すおう
)
に
烏帽子
(
えぼし
)
をつけた姿の写真であった。正月には、この床の間には父の弟子達から贈られた
供餅
(
おそなえ
)
が飾られた。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
刳袴
(
くくりばかま
)
に一刀を帯び、織人
烏帽子
(
えぼし
)
を額へ載せ、黒の頭巾で顔を包んだ、異形の風采ではあったけれど、これこの時代の庭師なのであった。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
を売っていたおじいさん、
鳩
(
はと
)
の豆を売っているおばあさん、
逃
(
に
)
げそこなってかわいそうに、
燈籠
(
とうろう
)
の下で
腰
(
こし
)
をぬかしてしまう。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
運慶は頭に小さい
烏帽子
(
えぼし
)
のようなものを乗せて、
素袍
(
すおう
)
だか何だかわからない大きな
袖
(
そで
)
を
背中
(
せなか
)
で
括
(
くく
)
っている。その様子がいかにも古くさい。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
珍しがっていたのは、
三番叟
(
さんばそう
)
が
烏帽子
(
えぼし
)
を被り鈴を持っているので、持って振りますと、象牙を入れた面から舌がちょいちょい出るのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
そのほか、ばくらふ、炭焼き、
烏帽子
(
えぼし
)
折り、鏡
磨
(
みが
)
きといふやうに、いろんなことをしながら、あちこちとさまよひ歩きました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
六波羅
(
ろくはら
)
風と言えば、猫も
杓子
(
しゃくし
)
も、右へならえで、
烏帽子
(
えぼし
)
の折り方やら、着つけの仕方まで、皆が平家一族を真似するのである。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
ここの大池の中洲の島に、かりの法壇を設けて、雨を祈ると触れてな。……
袴
(
はかま
)
、
練衣
(
ねりぎぬ
)
、
烏帽子
(
えぼし
)
、
狩衣
(
かりぎぬ
)
、
白拍子
(
しらびょうし
)
の姿が
可
(
よ
)
かろう。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
言葉でもろくに通じないくらいだのに、男は
烏帽子
(
えぼし
)
もかぶらず女は
髪
(
かみ
)
もさげず、はだしで山川を歩くさまはまるで
獣
(
けもの
)
のようではありませんか。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
がまがり、
中啓
(
ちゅうけい
)
が、飛んだ。と、吉良は、美濃守に受けとめられて、すうっと、
労
(
いた
)
わるように、抱き下ろされていた。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
羽織袴
(
はおりはかま
)
の役人衆の後ろには大太鼓が続き、
禰宜
(
ねぎ
)
の松下千里も
烏帽子
(
えぼし
)
直垂
(
ひたたれ
)
の礼装で馬にまたがりながらその行列の中にあった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それから後には神官を望んで、白服を着て
烏帽子
(
えぼし
)
を被った時もありましたが、後にはまた禅は
茶味禅味
(
ちゃみぜんみ
)
だといって、禅に
凝
(
こ
)
った事もありました。
我が宗教観
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
時には悪強情だと思われる位で、例えばあの役には
烏帽子
(
えぼし
)
を被せないで下さいといっても、いや、あれはどうしても被せなければいけないという。
久保田米斎君の思い出
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
金の
烏帽子
(
えぼし
)
の白拍子に、思わず、私の目は引きつけられ、そのまま、お師匠さまのことは、忘れるともなく、お忘れ申していたのでございました。
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
ちょうどその頃、先輩の玄洋社連が、大院君を
遣付
(
やっつ
)
けるべく、
烏帽子
(
えぼし
)
直垂
(
ひたたれ
)
で
驢馬
(
ろば
)
に乗って、京城に乗込んでいるんだぜ。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
去年の
今日
(
こんにち
)
は江城に
烏帽子
(
えぼし
)
の緒をしめ、
今年
(
こんねん
)
の今日は島原に甲の緒をしむる。誠に移り変れる世のならひ早々打立候。
島原の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
『和漢三才図会』四六に、玉珧俗いうタイラギ、またいう
烏帽子
(
えぼし
)
貝と出づるを見れば、真のタイラギより小さい故小帽子の意でショボシの名あるか。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その屋形船に乗合っている男女の頭を一つ一つさぐっているうちに、
短冊
(
たんざく
)
を持って笑っている
烏帽子
(
えぼし
)
男の首が、すこしぐらぐらしているのを発見した。
千早館の迷路
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
神明
(
しんめい
)
の
社
(
やしろ
)
に
来
(
きた
)
れば(下巻第七図)
烏帽子
(
えぼし
)
の神主三人早くも紅梅の
咲匂
(
さきにお
)
へる鳥居に
梯子
(
はしご
)
をかけ
注連飾
(
しめかざり
)
にいそがはし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
赤地にしきの
直垂
(
ひたたれ
)
に
緋縅
(
ひおどし
)
のよろい着て、頭に
烏帽子
(
えぼし
)
をいただき、弓と矢は従者に持たせ、
徒歩
(
かち
)
にて
御輿
(
みこし
)
にひたと
供奉
(
ぐぶ
)
する三十六、七の男、鼻高く
眉
(
まゆ
)
秀
(
ひい
)
で
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
直垂
(
ひたたれ
)
とでもいったような服装をした楽人達が色々の楽器をもって出て来て、あぐらをかいて居ならんだ。
雑記(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
勝手口から上りながら、道臣は臺所の千代松をチラと見て、輕く
會釋
(
ゑしやく
)
をすると、次の
室
(
ま
)
に入つて、柱の折れ釘に
烏帽子
(
えぼし
)
を掛け、淨衣は
衝立
(
ついたて
)
の前に脱ぎ棄てた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
籠堂
(
こもりどう
)
に寝て、あくる朝目がさめると、
直衣
(
のうし
)
に
烏帽子
(
えぼし
)
を着て
指貫
(
さしぬき
)
をはいた老人が、枕もとに立っていて言った。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だから君、火星のアアビングや団十郎は、ニコライの会堂の
円天蓋
(
まるてんじょう
)
よりも大きい位な
烏帽子
(
えぼし
)
を
冠
(
かぶ
)
ってるよ
火星の芝居
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
万歳の
被
(
かぶ
)
った
烏帽子
(
えぼし
)
を霰がたばしるというのは、寂しいながら正月らしい趣である。春の正月と、冬の正月とによって、感じに変化を生ずるほどのものではない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
家は何の奇もない
甘藷
(
かんしょ
)
畑と松林との間に建てられたものだが、縁側に立って爪立ち覗きをしてみると、浜の砂山の
濤
(
なみ
)
のような脊とすれすれに沖の
烏帽子
(
えぼし
)
岩が見えた。
健康三題
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大ナメ八丁という場所は、
烏帽子
(
えぼし
)
岳の頂稜から、真南に落下しているユワタル沢の合流点から始まる。
二つの松川
(新字新仮名)
/
細井吉造
(著)
そのとき、法師丸の身の
丈
(
たけ
)
は五尺二寸、始めて
長小結
(
ながこゆい
)
の
烏帽子
(
えぼし
)
を着けて父の後から歩いて行く姿を見ると、ちょうど
父子
(
おやこ
)
のせいの高さが同じくらいであったと云う。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
とすっかり
度胸
(
どきょう
)
をきめて、
腰
(
こし
)
にきこりの
斧
(
おの
)
をさして、
烏帽子
(
えぼし
)
をずるずるに
鼻
(
はな
)
の
頭
(
あたま
)
までかぶったまま
瘤とり
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
、
直垂
(
ひたたれ
)
の
伶人
(
れいじん
)
、
綾錦
(
あやにしき
)
の
水干
(
すいかん
)
に下げ髪の童子、
紫衣
(
しい
)
の法主が練り出し、
万歳楽
(
まんざいらく
)
や
延喜
(
えんぎ
)
楽を奏するとかいうことは、昔の風俗を保存するとしてはよろしいかもしれぬが
教育と迷信
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
広忠の幼名は仙千代であるが、持広は身をもってこの一少年をかくまい、進んで仙千代のために
烏帽子
(
えぼし
)
親となって、彼に元服させ名前の一字をあたえて広忠と名乗らせた。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
と言いながら、衛門督は
烏帽子
(
えぼし
)
だけを
身体
(
からだ
)
の下へかって、少し起き上がろうとしたが、苦しそうであった。柔らかい白の着物を幾枚も重ねて、夜着を上に掛けているのである。
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
などかぶってひどくもったいぶった服装で山賊の京の宿舎を訪ね、それこそほんものの候言葉で、昨日のお礼を申し、統領の鷹揚な挙措や立派な口髭に一目で
惚
(
ほ
)
れ込み
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
をかぶった神主姿の男は
棟梁
(
とうりょう
)
の知人のなかから捜しだして来たものであった。それで間にあうのだ。棟梁と呼ばれている三谷三次がたたき大工であっても構わないのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
静かにお駕籠を降りた
烏帽子
(
えぼし
)
姿のけだかき威厳!——しいんと鳴りを静めていた群衆は、さらにしいんと鳴りを静めて、等しくえりを正したのも名宰相伊豆守なればこそでした。
右門捕物帖:27 献上博多人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
若い武士たちは
烏帽子
(
えぼし
)
に
狩衣
(
かりぎぬ
)
をつけ、毛抜形のそりをうった
太刀
(
たち
)
を傍に置いて、おそらくはじめて見るのだろう禁裏の、それも裏庭からの眺めに、ものめずらしげな目を散らしていた。
菊
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
まもなく大勢の足音が聞こえたが、その中でひときわ高く
沓音
(
くつおと
)
をひびかせて、
烏帽子
(
えぼし
)
・
直衣
(
のうし
)
を召した貴人がお堂におあがりになると、おつきの武士四、五人が、その左右に座をしめた。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
姿の神官が、神前の供え物を、その白木の三宝を一つ一つに片づけていた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
南は標高二八四一米のレンゲ岳(
三
(
み
)
ツ
叉
(
また
)
)に始まり、うねうねと屈曲していはするものの、大体において真北を指し、
野口五郎
(
のぐちごろう
)
、
烏帽子
(
えぼし
)
、
蓮華
(
れんげ
)
、
針
(
はり
)
ノ
木
(
き
)
、
爺
(
じい
)
、
鹿島槍
(
かしまやり
)
、
五龍
(
ごりゅう
)
、
唐松
(
からまつ
)
等を経て北
可愛い山
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
しのぶずりの
狩衣
(
かりぎぬ
)
に
指貫
(
さしぬき
)
の
袴
(
はかま
)
をうがち、
烏帽子
(
えぼし
)
のさきを梅の枝にすれすれにさわらし、遠慮深げな気味ではあったが、しかし眼光は鋭く、お互に何の
思
(
おもい
)
をとどけに来ているかを既に
見貫
(
みぬ
)
いている
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
濃州郡上の
郷
(
さと
)
八幡城
(
やわたじょう
)
三万八千八百石の城主、
金森兵部少輔頼錦
(
かなもりひょうぶしょうゆうよりかね
)
の御嫡、同じく
出雲守頼門
(
いずものかみよりかど
)
後に
頼元
(
よりもと
)
が、ほんの五六人の家臣を
召連
(
めしつ
)
れて、
烏帽子
(
えぼし
)
岳に狩を催した時、思わぬ手違いから家来共と別れ
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
尾張の宮地太郎という
武士
(
さむらい
)
が花見をしていると、山の地蔵様が山伏に化けて来てのぞきました。そうしてよび込まれて歌をよみ、
烏帽子
(
えぼし
)
をかぶり鼓を打って、お
獅子
(
しし
)
を舞ったという話もあります。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
風折
(
かざおり
)
の
烏帽子
(
えぼし
)
の如きもの芽あり
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
折釘
(
おれくぎ
)
に
烏帽子
(
えぼし
)
掛けたり春の宿
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
“烏帽子”の意味
《名詞》
烏帽子 (えぼし)
日本の伝統的な被り物の一つで、元服した男子が被るもの。材質は布帛や漆塗りの紙などで、現代においては神主などが用いる。
(出典:Wiktionary)
“烏帽子”の解説
烏帽子(えぼし)は、平安時代から現代にかけて和装での礼服着装の際に成人男性が被った帽子のこと。
(出典:Wikipedia)
烏
漢検準1級
部首:⽕
10画
帽
常用漢字
中学
部首:⼱
12画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“烏帽子”で始まる語句
烏帽子岩
烏帽子折
烏帽子子
烏帽子親
烏帽子岳
烏帽子師
烏帽子籠
烏帽子山麓
烏帽子額
烏帽子打