鼠色ねずいろ)” の例文
どこからともなく、薄灯うすあかりがポーッと射した高座の下のあたり、鼠色ねずいろの着物を裾長すそながに着た、変な者がヒョロヒョロと立っているではありませんか。
さぎのように、ひとりの、うす鼠色ねずいろ宗服しゅうふくを着た虚無僧こむそうが、柳の下にたたずんでいた。じいっと、水のながれを見つめていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
闇はうるしのごとく濃くて、怪しの物の逃げ行く姿もよくは解りませんでしたが、とにかく、鼠色ねずいろの長いすそ、振り散らした黒髪、青白い顔などは、誰の眼にもハッキリ焼き付けられました。
次の部屋は一面の蘭塔婆らんとうば、舞台をぐっと薄暗くして、柳の自然木の下、白張しらはりの提灯の前に、メラメラと焼酎火しょうちゅうびが燃えると、塔婆の蔭から、髪ふり乱して、型のごとき鼠色ねずいろ単衣ひとえを着た若い女が