黄薔薇きばら)” の例文
微風も一繊雲もないのに、ゆらゆらとその潮が動くと、水面に近く、さっ黄薔薇きばらのあおりを打った。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後房の園には、黄薔薇きばらの香がれ匂い、苑廊えんろうらんには、ペルシャ猫が腹這はらばっていた。猫は眠った振りして、中央アジア産の白いちんがいまはちを捕えてなぶっているさまを薄目で見ている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同一おなじ色にコスモスは、庭に今さかりだし、四季咲の黄薔薇きばらはちょいとのぞいてももうそこらの垣根には咲いている、とメトロポリタンホテルは近し、耳れぬ洋犬かめは吠えるし、汽笛は鳴るし
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう一度、以前、日比谷の興行で綺麗な鸚鵡おうむが引金を口で切って、黄薔薇きばらしべを射て当てて、花弁を円く輪に散らしたのを見て覚えている。——扱いは、たしか葡萄牙ポルトガル人であったと思う。