麻裃あさかみしも)” の例文
万感のうちに、彼は肌着をつけ、上着、麻裃あさかみしもまで、すべてをまとい、同時に、何か心がすわったような重厚感を自分の肚に覚えた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このとき、彦左ヱ門七十九歳、白髪頭にトンボほどの小さいマゲ、麻裃あさかみしも、一丈二尺朱ぬりの槍をついて、シワだらけのくせに、気力だけは若い武士にも負けぬいきおいがあります。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
紋服に、下り藤の紋の付いた麻裃あさかみしもを着て、さッと血の気の引いた顔にくぼんだ眼をえ、口唇くちびるを蒼くしている戸部近江之介とべおうみのすけである。西丸にしまる御書院番頭ごしょいんばんがしら脇坂山城守わきざかやましろのかみ付きの組与頭くみよがしらを勤めている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
蔵人は乗りかかって止めを刺すと、脇差の血も拭って鞘におさめ、それを床の間に置き、さっきのとおりに、風呂場へ行って手水ちょうずをつかい、白帷子しろかたびら麻裃あさかみしもを着て、ぶらりと玄関へ行った。
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)