魚田ぎょでん)” の例文
さかなは何があるな。甲州街道こうしゅうかいどうへ来て新らしい魚類を所望する程野暮ではない。何か野菜物か、それとも若鮎わかあゆでもあれば魚田ぎょでんいな」
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「いいえそれほどでもございませんでした、今晩のお酒に甘露煮と魚田ぎょでんをお作り申しまして、余ったぶんは焼干しにしてもよいと思いましたから」
日本婦道記:糸車 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
庸三はあゆ魚田ぎょでんに、おわん胡麻酢ごますのようなものを三四品取って、食事をしてから、間もなくタキシイをやとってもらった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あゆの大きいのは越中の自慢でありますが、もはや落鮎になっておりますけれども、放生津ほうじょうづたらや、氷見ひみさばよりましでありまするから、魚田ぎょでんに致させまして、吸物は湯山ゆさん初茸はつたけ、後は玉子焼か何かで
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠来の客にもめずらしく思ってもらえそうなものといえば、木曾川の方でとれた「たなびら」ぐらいのもの。それを彼女は魚田ぎょでんにして出した。でも、こんな山家料理がかえって正香をよろこばせる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
料理法に魚田ぎょでんなどと言って、味噌をつけて焼くのがある。
若鮎の気品を食う (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
さかなはいつものとおり、魚田ぎょでんと塩焼と味噌椀、漬物をたっぷり頼む、へ、——」彼は右の肩をしゃくって唇を曲げた
霜柱 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)