髪膚はっぷ)” の例文
欣弥 一別以来、三年、一千有余日、欣弥、身体、髪膚はっぷ、食あり生命あるも、いつにもって、貴女の御恩……
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
願わくば、愛を割き友を抑え、児を以て死することすでに久しと為し、尋常の親肢、身体髪膚はっぷ、併せて以て賜わらんことを。頑児の願いは、何を以てかこれに加えんや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
身体髪膚はっぷ父母に受く、毀傷きしょうせざるは孝のはじめ、こんな格言もむだになる、可愛い女もだくことができない。生まれもつかぬ片端者かたわもの! よいか、ごろん棒、折っぺしょるぞ
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身体髪膚はっぷ我これを父母に受け、鉄石の心臓鋼鉄の筋骨我は神の像と精とを以て世に出でたり、我にアダムの無死の体格なかりしにもせよ、我にアポロの完全均斉なる身体なかりしにもせよ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
役目を大切に存ずる故にまことの盲人になり果てたりと申すこと、少しも言分いゝぶん立ちがたし、父母より受けたる身体髪膚はっぷみだりにやぶり傷つくるは古人の戒むるところであるのに、その方が行いは
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)