高知こうち)” の例文
たとえば、私がすしを食うときにそのはしにかび臭いにおいがあると、きっと屋形船に乗って高知こうち浦戸湾うらとわんに浮かんでいる自分を連想する。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今日は高知こうちから、何とかおどりをしに、わざわざここまで多人数たにんず乗り込んで来ているのだから、是非見物しろ、めったに見られないおどりだというんだ
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
幼少のころ、高知こうちの城下から東に五六里離れた親類の何かの饗宴きょうえんに招かれ、泊まりがけの訪問に出かけたことが幾度かある。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
高知こうちも夕なぎの顕著なところで正常な天気の日には夜中にならなければ陸軟風が吹きださない。それに比べると東京の夏は涼風に恵まれている。
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三月三日に井伊大老いいたいろうの殺された報知が電信も汽車もない昔に、五日目にはもう土佐とさ高知こうちに届いたという事実がある。今なら電報ですぐ伝わる。
一つの思考実験 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
土佐とさ高知こうち播磨屋橋はりまやばしのそばを高架電車で通りながら下のほうをのぞくと街路が上下二層にできていて堀川ほりかわ泥水どろみずが遠い底のほうに黒く光って見えた。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
島へ渡ったのは、たぶん大阪おおさか高知こうち間飛行の話の時に思い浮かべた瀬戸内海せとないかいの島が素因をなしているかと思われる。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
前々日A研究所の食堂で雑談の際に今度政府で新計画の航空路のうわさが出て、大阪おおさかから高知こうちまでたった一時間五十五分で行かれるというような事を話し合った。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その怪異の第一は、自分の郷里高知こうち付近で知られている「はらみのジャン」と称するものである。
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今度の大阪おおさか高知こうち県東部の災害は台風による高潮のためにその惨禍を倍加したようである。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのころ郷里高知こうちでは正月の十四日の晩に子供らが「粥釣かゆつり」と称して近所の家を回って米やあずきや切りもちをもらって歩いて、それで翌朝十五日の福の粥を作るという古い習慣が行なわれていた。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)