香華かうげ)” の例文
其處に移された地藏樣は、急に涎掛けをしたり、香華かうげを供へられたり、たつた一日のうちに見違へるやうに豪勢な姿になりました。
御墓の石にまだす苔とてもなき今の日に、早や退沒の悲しみに遇はんとは申すも中々に愚なり。御靈前に香華かうげ手向たむくるもの明日よりは有りや無しや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
久しく此寺に居る老僕の言ふ所によれば、従来豊洲の墓に香華かうげを供したものはわたくし一人ださうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
聞しに直にそばなる故尋ねゆきて金子二分取出し葬り呉よと頼みけるに回向院の庵主あんしゆ承知して奇特きどくなることなりと是を葬り香華かうげ手向たむけ經文きやうもんを讀て供養致しければ城富は燒香せうかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
香華かうげみだるゝばゆさに
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
案内されたのは、直ぐ障子の中、まだ入棺の運びにもいたらず、床の上に寢かして、香華かうげだけ供へてあります。
爺が苔を掃つて香華かうげを供へるを待つて、わたくしは墓を拝した。そして爺に名刺を託して還つた。しかし新光明寺の住職は其後未だわたくしに音信いんしんを通じてくれない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
主人金右衞門の死骸は檢屍けんしが濟んだばかりで、二階の八疊に寢かしたまゝ、形ばかりの香華かうげそなへて、娘のお喜多が驅け付けた親類の者や近所の衆に應待し
壽阿彌の墓は香華かうげ未だ絶えざるに厄にかゝつて、後僅に不完全なる代償を得たのである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
主人山三郎の死骸は、裏の一と間に納め、香華かうげだけは供へましたが、まだ佛前の用意も、入棺の手順もつかず、多勢の家族と奉公人と、町役人と近所の衆が、ザワザワと騷ぐだけ。
清太郎の死骸はまだ其の儘、型ばかりの香華かうげを供へて、若い女が一人、その前に泣いてゐた樣子でしたが、三人の足音を聞くと、ハツと起ち上がつて、極り惡さうに階下したへ降りてしまひました。