飼料かいば)” の例文
わしは毎日その村へ水をくみに、たるを背負って出かけるのだ。だがあの村じゃ一ぺんだって飼料かいばをくれたことがないな。
夫人は昵懇じっこんらしい百姓家に、馬を預け飼料かいばをやるように頼むと、鞭をステッキのように持ったまま青年と並んでグリーン・ホテルへ行く坂道を歩き出した。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「この飼料かいばのおん豆をせんじて飲ますれば、夜泣き、歯ぎしりが止むとある。権叔父、おぬし飲むがええ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬は不平な主人の後にいて、とぼとぼと馬小屋の方へ帰って行きました。好な飼料かいばをあてがわれても、大麦の香をいで見たばかりで、口をつけようとはしませんでした。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まるで、大膳職だいぜんしょくのように、あれこれと細かく念をいれたすえ、ようやく飼料かいばが出来あがる。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
飼料かいば桶に、藁を入れてやった。牛は親子で、早速、それを食べはじめる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「しかし、諸国の情勢を、危険をおかして、敵地と自国を、出没して歩くなど、われわれにはない役得やくとくだ。馬の飼料かいばを徴発したり、馬のあいだに寝たり、小荷駄隊も、華やかでないなあ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らは、木賃きちんの定例どおり、例の自炊じすいにとりかかり、寝酒を飲んではしゃぎ合った。もちろん林冲へも馬の飼料かいばでもくれるように木鉢に盛った黄粱飯こうりょうめしが、首カセの前に置かれはしたが……。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飼料かいばの出し入れには袖の下も多いとかで、囚人仲間では、羨望せんぼうの職場だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)