風月ふうげつ)” の例文
暫くの間であったが、風月ふうげつの洋菓子などふんだんにあった。ボンボンといって一粒ごとにいろいろの銘酒を入れた球状の菓子もある。
これを相手に月にまきが何炭が何俵の勘定までせられ、「おっかさん、そんな事しなくたって、菓子なら風月ふうげつからでもお取ンなさい」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
元は岡野今の風月ふうげつの前のところへ来ると、古道具屋の夜店が並んでいます。ひょいと見ると、小さな厨子ずし這入はいっている不動様が出ている。
鍋町なべちょう風月ふうげつの二階に、すでにそのころから喫茶室きっさしつがあって、片すみには古色蒼然そうぜんたるボコボコのピアノが一台すえてあった。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
という話だったが、生憎あいにく、私が行けないと姫草が言ったとかで、あとから歌舞伎座の番組と一緒に妻と子供へと言って風月ふうげつのカステラを送って来たりした。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
斯くて風月ふうげつならで訪ふ人もなき嵯峨野の奧に、世を隔てて安らけき朝夕あさゆふを樂しみしに、世に在りし時は弓矢のほまれ打捨うちすてて、狂ひじにに死なんまでこがれし横笛。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
西洋から帰ってからは、日曜に銀座ぎんざ風月ふうげつへよくコーヒーを飲みに出かけた。当時ほかにコーヒーらしいコーヒーを飲ませてくれる家を知らなかったのである。
コーヒー哲学序説 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
胃の工合があまりよくなかったが気分がいいので乗合自動車で銀座へ行った、そして例のように風月ふうげつへはいってコーヒーを呑んだ。胃がよくないと思って一杯でよしたのであった。
病中記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)