風早かざはや)” の例文
がなかなかそれらの説諭には承服せない、一揆の与党には温泉おんせん郡、和気わけ郡、風早かざはや郡、野間郡等も加わって、残る処は周布郡桑村郡のみであった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
大正六年十月十五日 帰省中風早かざはや柳原西のに遊ぶ。風早西の下は、余が一歳より八歳まで郷居せし地なり。家むなしく大川の堤の大師堂のみ存す。其堂の傍に老松あり。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
と熱の無い口氣こうきで謂ツて、もう冷たくなツた燒肉ビフテキを頬張るのは、風早かざはやといふ學士で。彼は今晝餐ひるげツてゐるので、喰りながらも、何か原書を繰開くりひろげて眼を通してゐる。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
甘糟の答ふるにさきだちて、背広の風早かざはやは若きに似合はぬ皺嗄声しわがれごゑ振搾ふりしぼりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「吹きうつる気噴いぶきのさ霧に」、万葉に、「君がゆく海べの屋戸に霧たたばが立ち嘆くいきと知りませ」(巻十五・三五八〇)、「わが故に妹歎くらし風早かざはやの浦のおきべに霧棚引けり」(同・三六一五)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)