面頬めんぼお)” の例文
革のこなし方が実に見事で、一朝にして生れた仕事でないのを想わせます。面頬めんぼおどう籠手こてもしばしば見とれるほどの技を示します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
勝助は、弟へ云いながら、顔へ“面頬めんぼお”を当てた。——勝家なりと名乗って、すぐ敵に面を知られないためである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耶蘇が首をあげて眼を開くと、面頬めんぼおけた武者の顔と変った。その武者の顔をよくよく見て居る内に、それは面頬でなくて、口に呼吸器を掛けて居る肺病患者と見え出した。
ランプの影 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
釣瓶の竿を握ったまま、鉢金はちがねかぶと薄金うすがね面頬めんぼおに、ほとんど眼と鼻だけしか現わしていない武者の顔は、屋内を振向いて、ややしばらく鶴菜の影を凝視していた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
騎上の兵もまたしかりで、おもてにまで薄金うすがね面頬めんぼおという物をかぶり、全身、矢も立たぬ不死身の武装——。どうもそんなぜいたくな武装は、禁軍ならでは三千もの武者にほどこし難い。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
面頬めんぼおられている。——勝家とは似せても似つかぬ白皙明眉はくせきめいびの若者の首級である。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日頃は、無口で、おとなしく、人いちばい好学温雅なるために、却って、勝家や盛政などからも余り好かれなかった白面二十五歳の若武者が——その面頬めんぼおの下に純なるおもてをつつんでいようとは。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)