面貌おもざし)” の例文
「では訊くが、しきりに俵一八郎の身に近づこうとする者は、一体、どのような風采、また面貌おもざしなど、しかと見届けておいたかどうじゃ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見て彼の旅人は驚きたる樣子にて小聲になり貴娘あなたはお花樣にては無きや如何のわけで此家にと云れてお花は薄暮うすぐらければ面貌おもざしは知れざれど我が名を呼は不審ふしんなりと彼の旅人の顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それからまた二日ほどたったある日の午後、私は上品な面貌おもざしをした老婦人の訪問を受けた。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
父の国香に似て、背もすぐれ、面貌おもざしも上品だし、都の知性も、身について、公卿真似くげまねの、優雅をつねに忘れない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が久しぶりに、彼の、荒々しくのみ働いている神経と粗朴な生活の中に、彼女のやさしい面貌おもざしが浮かんできた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
辻には、高札を立て、松虫の局と鈴虫の局の年ごろや面貌おもざしを書きそえ、院の衛府まで、そのありかを告げてきた者には、恩賞をとらせるであろうと告示した。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きッと、半身はんしんをつきだした伊那丸いなまる針葉樹しんようじゅ木洩こもを、藺笠いがさとしろい面貌おもざしへうつくしくうけて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猿めいた面貌おもざしをした貧しい旅の一青年に会い、豁然かつぜんと、多年の悪夢や迷妄めいもうからまされて——後に年経て、その時の猿顔の男が、羽柴はしば秀吉と名乗っていることがわかり、随身してひとすじの槍を受け
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう、やはり猿だ。なるほど。面貌おもざしはそう変ってもいない」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)