面相かおつき)” の例文
小むずかしい面相かおつきをして書物と疾視競にらめくらしたところはまずよかったが、開巻第一章の一行目を反覆読過して見ても、更にその意義をし得ない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
愕然がくぜんとして文三が、夢の覚めたような面相かおつきをしてキョロキョロと四辺あたり環視みまわして見れば、何時いつの間にか靖国やすくに神社の華表際とりいぎわ鵠立たたずんでいる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
面長おもながの、老人だから無論しわは寄っていたが、締った口元で、段鼻で、なかなか上品な面相かおつきだったが、眼が大きな眼で、女には強過きつすぎる程けんが有って
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
跡で文三はしばらくの間また腕をんで黙想していたが、フト何か憶出おもいだしたような面相かおつきをして、起上たちあがッて羽織だけを着替えて、帽子を片手に二階を降りた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それからそれ止度とめどなく想出されて、祖母が縁先に円くなって日向ぼッこをしている格構かっこう、父が眼も鼻も一つにしておおきくしゃみようとする面相かおつき、母が襷掛たすきがけで張物をしている姿などが
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)